今回の新刊は、震災後の混乱の中で発売日どおりに出るのか不安でしたが、無事に発売されて本当によかったです。
出版社並びに配送会社の方たちに心から感謝致します。
さて、新刊情報がネット上に最初に上がってきたときには「虹色のファンファーレ」というタイトルでした。
このタイトルではストレートに悠季のコンクール結果が見えてしまいそうですので、「天上の愛 地上の愛」に変更したのは当然のことだったかと思います。
「天上の愛」=音楽への愛 「地上の愛」=圭はもちろんですが、自分を取り巻く人たちへの愛
という意味ではないでしょうか。
よいタイトルだったと思います。もしかしてどこかからの引用なのでしょうか?
さて内容ですが、
すごくよかったです・・・・・!! ←花丸つき
あ、このまま完結させてしまいそうになりました(苦笑)
でもそれじゃまずいので、蛇足だと言われるのを覚悟で少々感想を。
ロン・ティボー国際バイオリンコンクールに焦点を合わせて、予選から決勝に至るまでの出場者たちの様々な動きや内幕が丁寧に書きこまれており、悠季のいろいろなエピソードを重ねて心情を浮き上がらせるように描かれているのがとても面白く読みました。
フジミが始まった当初の悠季は、バイオリンを弾く事には無上の喜びを感じていたけれど、人前で演奏を披露することに対してはどうしようもなく緊張し委縮していました。
けれどようやく演奏を楽しみ、聴衆に自分の感じている喜びや心地よさを伝える醍醐味を得るようになってきました。
何よりも舞台へ上がることが待ち遠しくなっていて、曲を弾き終えて『もっと弾きたい』『次の演奏のチャンスが欲しい』と考えるようになるとは、ずいぶんと進歩したものだとしみじみ思いました。
圭にさびしい思いをさせてしまう申し訳なさを感じながらも、バイオリニストとしての自分を優先させることも出来るようになってきたのですね。
ぎりぎりまで曲想を絞り込んでよりよい演奏をするために自己を追いこむ情熱は、前にも増してストイックなものとなっていました。
そして、ようやくプロの演奏家としてたどり着いて得たもの。
――― バイオリンと出会って以来ずっと、僕はこの楽器が奏でる音楽に恋をしていて、五里霧中での暗中模索に七転び八起きしながらも、腕が上がって少しずつ思いが通じていくほどに、さらに深く恋い焦がれていくのであって・・・・・それが無上に幸せだと思う事に。
独白するこの言葉は何よりもすばらしいものでした。
そしてコンクールは本選決勝へと進み、結果は最優秀賞受賞!
おめでとう、悠季!
今までの精進が実を結びましたね。
受賞者を読みあげるとき、最初は自分が選外に落ちたと思ってがっかりしたところはいつもの悠季らしいと苦笑しましたけど。
あとがきで秋月先生が悠季の結果をどうする迷ったと書かれていましたが、今までの努力と苦労の成果が出て、優勝できたのは本当によかったと思ってます。
ファンと悠季の(笑)無言のプレッシャーのたまものでしょうか(爆)
今回は特に大震災の直後に出た本ですから、架空のお話とはいえ、よかったなぁ気持ちが明るくなりました。
入賞と聴衆賞を得た程度ではこれほどのカタルシスは得られなかったと思います。
ブラッヴォー!!
思い出に残る1冊となりました。
悠季の演奏を聞きに来たくて必死にスケジュールをやりくりする圭は、いつもにも増してがんばってますね。
現実に悠季の演奏が聞けるなら、私もパリに行きたい・・・・・。←おい!(笑)
曲想を固めている途中でうっかり感想を言ってしまってお邪魔虫にされてしまってしょげたり、無言の執事ごっこに興じていたりと、なかなかかわいらしい姿を見せてくれました。
悠季の演奏が入ったCDウォークマンを差しだされるとうっかり。猫にまたたび?(笑)
お風呂のお湯を入れていることを忘れて溢れさせたりするところは、まだまだ甘い。ぷぷ。
本選終了まで我慢するつもりが、我慢しきれずにエッチに及んでしまうなんて、更に修行が足りん!(爆)
でも、悠季に頼まれて10分の道のりを本当かどうか、全速力で走って2分40秒!すごいなぁ。
と、感動したと書いたところで次は赤ペンチェックですが、本文の感動を殺ぐほどの減点効果はなかったと思いますので、読まなくても構わないという意味において、更に大きな蛇足です。
私が気になったところは5点
@コンテスタントの人数
『訣別』の中で予備審査に通った人数が応募者82名、予備選通過が31人と書いてあります。
今回の新刊では18名・・・・・?
いったいどこに13名が消えてしまったのでしょうか?(爆)
A何回か使われていた「待ち長い」という言葉。
あまり聞き慣れないような言葉だと思います。
同じような意味の言葉に『待ち遠しい』というのがあって、こちらの方がよほど一般的ですよね。
もしかして、熊本弁なのでしょうか?
B圭が玉城整体院(サンセットサンライズの中で書かれていた正式名称は『玉城整体療法院』)で夏休み中に特訓を受けたと言っていたそうですが、『選ばれし者』の中ではもっと前に特訓を受けていたはず。
悠季が神宮の森で遭難しかかるという事件の夜、筋肉痛でへばった悠季をマッサージでほぐしてくれた時の会話では既に習いに行っていたようですので、追加特訓を受けに行っていたのでしょうか?
そう言えば玉城さんの名前は、玉木から玉城へと無事元に戻っていましたね。
CP158
吉柳氏の台詞「守村さんの《シャコンヌ》がハードルを上げたんですよ」と言っていますが、これは使い方が間違っているのではないかと思います。
ハードルが高いという使い方では、【乗り越えなくてはならない困難が大きいさま】という意味になりますから、【ハードルを上げた】では難題を更に難しくするというような意味になってしまいます。
文章の前後から推測すると、《シャコンヌ》の出来が断トツで予選通過出来たという意味だと思うので、この場合は『ポイントを上げた』あたりが妥当ではないかと思います。どうでしょうか?
※他のライバルコンテスタントたちの合格ラインを上げたというような意味で『ハードルを上げた』と書いたのではないか?というご意見をいただきました。
でもそうなると、直後の文章にライバルたちのことが書かれてなければいけないのではないかと思うのですが・・・・・?
参考のために書かせていただきました。
この台詞を言った吉柳源太郎氏について。
登場した当初は気難しくとっつきが悪そうに見えたのですが、パリでの合宿生活の間も圭に睨まれない性格だということだけで貴重な人材です。
悠季のコンクールでの演奏面のフォローはもちろん、精神面に気を配ったりステージ上の手助けなど実にプロ伴奏家として大活躍でした。
この先もバイオリニスト守村悠季のよきパートナーとして活躍されることを祈ってます。
さて、一応最後のD
コンクールに取材のため(?)やってきていたつるしまさん。今回も名前が鶴嶋のままでしたね。
都留島で読み慣れているので、そろそろ気がついて元どおりに訂正してもらえるとありがたいんですが。
他にも気になるような場所があるのかもしれませんが(←私はザル)、全体の出来の良さに感動しているのでスルーさせてもらいます。
悠季の優勝で終わった今回の新刊ですが、まだ先は続くようで、続きの本も1冊以上あるらしいという嬉しい知らせ。
次の新刊にはあっさりと書き流された悠季のブラームスの演奏について、述べられているのでしょうか?
以前、日コンでは悠季の本選で弾いたシベコンの演奏について、分けられて詳しく述べていたんですが、今回もそうなるかなあと推測しています。
優勝したからには、悠季はこれからプロとして2年間ガラコンサートのステージをこなす日々が待っています。
もしかして次に待ちうける試練とは、サムソンが悠季を狙ってくるとかでしょうか?
悠季が指輪をはめようと言い出したことに対して、圭があまりよい返事を返さなかったことからもかなり怪しい裏がありそうです。
【悠季 MY LOVE 】の彼なら大喜びで指輪をはめるかと思っていたわけですからね。
フジミホールのこけら落とし公演も開かれることになりそうですし、悠季の大学時代のバイオリン科の同級生、住吉氏以外に出てきた人物、東京フィルに入った(らしい)矢島氏がこのあと東京フィルとの共演の時に再会するのでしょうか?
いろいろとありそうですね。
次の新刊も楽しみにお待ちしております♪
オマケ話を二つは、作品展示室に移動しました。